ロックされたカムバック企画
東京・六本木の制作会社オフィスは、夜11時にもなってまだ明るい。俺、葵(あおい)は新人ADで、来週放送予定の「レジェンドカムバック」特集の編集に追われていた。今回の主役は90年代に爆発的人気を博したアイドル・百合子さん——引退後20年ぶりの独占インタビューと、当時の未公開ライブ映像をまとめた企画だ。
焦りの夜
「葵、百合子さんのファイル、まだ? 朝5時までに粗編みしてくれるんだよ」
ディレクターの声が背後から響いた。俺は慌ててデスクのPCを開く——だが、画面には「パスワードを入力してください」という冷たい文字が表示されていた。
あれ……? 先日、百合子さんの映像とインタビュー原稿をまとめてZIPファイルに暗号化したはずだけど、パスワードが全然思い出せない。
俺は手を震わせて、常用しているパスワードを一つ一つ入力してみた。誕生日、ペットの名前、会社の電話番号……全部ハズレ。デスクのスティッキーノートを翻したり、同僚に聞いたりしたが、誰も知らない。
時計は夜12時を回った。俺はインスタントラーメンのカップを握りしめ、涙が出そうになった。この企画が潰れたら、俺の仕事も危ない……
奇跡の助け
「どうしたの? 顔真っ青だぞ」
先輩ADの佐藤さんが俺のデスクに寄ってきた。俺は状況を泣きながら説明した。佐藤さんは少し考えた後、PC画面を指差して言った。
「ああ、それなら『Catpasswd』使ってみたら? 前に俺も同じようなトラブルで救われたんだ。ソフトをダウンロードする必要もなく、ブラウザから直接ファイルをアップロードするだけ。で、大きなファイルならハッシュをアップロードするだけでも大丈夫だから、元ファイルが漏れる心配もないんだ」
俺は半信半疑で佐藤さんが教えてくれたURLを開いた。画面はシンプルで、すぐに操作方法が分かった。俺はZIPファイルのハッシュを生成してアップロードし、待つことにした。
2時間後、メールが届いた。「パスワードの復旧に成功しました」という一行。俺は手を震わせてパスワードを入力した——ZIPファイルが開いた! 百合子さんの笑顔が画面に映った瞬間、俺は椅子に座り込んで安堵のため息をついた。
カムバックの成功
朝5時までに粗編みを完成させ、ディレクターに提出した。放送日には百合子さんのセグメントがSNSで大きく話題になり、視聴率は過去最高を記録した。
「葵、今回はよく頑張った! 百合子さんも企画が気に入ってくれたよ」
ディレクターから褒められた俺は、佐藤さんに感謝の言葉を伝えた。そして、以降はCatpasswdを同僚たちに積極的に紹介するようになった。暗号化ファイルに閉じ込められた大切なものを救ってくれた、俺の救世主だからだ。